なぜ、メンタルヘルス領域においてセルフケアが重要か(あらためて)

メンタルヘルスを保つためにセルフケアが重要であることは既知のことであると思います。しかしながら、その重要性を踏まえながらも人は時間と共に、あるいは日々の忙しさの中で自身へのケアをおろそかにしてしまう。だから、自戒の意味も込めてセルフケアがなぜ重要であるのかをあらためて言語化しようと思います。

本校では、メンタル不調により、日本では経済損失が年間◯兆円で云々...のようなマクロな話ではありません。ここではやめて、個人としてみた時のセルフケアの重要性についてあらためて確認しておこうと思います。

1.セルフケアとは

セルフケアは非常に広義な意味を持つ言葉です。一言で表せば「自己管理」といった具合になると思いますが、身体的な部分も含めたセルフケアで言えば、健康診断や運動すること、食事に気をつけること、近年注目度の高い予防医療の中でよく行われるような遺伝子検査なども該当します。精神的な領域で言えば、ストレス発散のために何かをしたり、瞑想をしたり、睡眠を多めにとったり、ストレスコーピングの方法を学んだり、方法としては何千何万とあるでしょうが、メンタルヘルスに与する自己管理であること、方法は様々あり、個々人で適切な方法が異なると捉えておくといいかもしれません。

2 . セルフケアを確立するために

セルフケアを確立するためには、まず教育が有効であると考えています。それは2つの観点からで、1つは自身を俯瞰的に見れるようになること、もう1つは自身のセルフケアに出会うために。

メンタルヘルス対策には、3つの段階があると言われており、一次予防ではメンタルヘルス不調の未然防止、例えば心理教育を行う、相談窓口を周知徹底する、職場環境の改善、ストレスチェックなどが当てはまります。二次予防では、不調の早期発見と適切な対応とういことで、対象者へカウンセリングを実施するなどがこれにあたります。三次予防では、職場復帰支援など、スムーズにメンタル不調から復帰がなされ、復帰後も健康な状態で活動ができるようにサポート体制を整備します。こうした対策が3つの段階であるのですが、セルフケアにおいては一次予防においてメンタルヘルスや心理に関する教育や研修を実施し、知識付与を行うことが重要であると考えています。

こうした知識は、自分自身を俯瞰的に考えるための道具として活躍してくれます(何かのフレームワークを与えられたら、否応なしに視点が高いところになりますよね)。

まずは、こうした知識付与をきっかけに自分自身を高い視点で捉えられるようになることがセルフケアを確立するために重要です。そして、心理教育(研修)は切り口を変えて定期的に実施することが有効だと思います。というのも、今でこそ認知行動療法が心理療法の中ではメジャーで最も取り上げられることが多いと思いますが、そのほかにも多くの理論的バックボーンを持った心理療法が存在します。それらが役に立たないと感じる人もいると思いますが、触れる機会を提供することは大事です。
また、具体的なセルフケアの方法についても、色々試してみることが重要で、ヨガや瞑想などマインドフルネス的なことが最近は主流ですが、登山やeスポーツなどセルフケアに繋がりそうなことは山ほどあります。こうしたものは学校や企業で取り入れることは難しいと思いますので、個人や友人など小さなグループで色々試してみる結果的にセルフケアの充実につながるかもしれません。

3.セルフケアで得られるメリット

セルフケア能力を向上させることで得られるメリットとして、自己覚知能力向上が一番大きいと考えています。要するに、自分自身を俯瞰的にみられるようになること、メタ認知がつくというイメージです。セルフケアの視点でこれらの能力が高まればどのようなメリットがあるかといえば、自身の変化に気が付きやすくなることです。今までストレス解消でやっていた何か(趣味など)が途端につまらなく感じたり、前までは何にも感じなかった他人の言動にイライラしたり、ちょっとした変化に気が付きやすくなります。こうした変化を見逃さず、その要因を分析するという行動がまさに自身を危機的な状況から救ってくれるものになります。もちろん、そうした変化が必ずしも悪い兆候であるわけではないですが、いざという時の自分の中のセーフティーネットとして機能してくれるはずです(もちろん、他者の変化にも気づきやすくなり、誰かを救う可能性だってあります)。
また、この自己覚知能力が向上することで物事を俯瞰的に捉えられるようになり、自身の今後のキャリアや仕事、管理職の方であればマネジメントなどあらゆる方面でメリットを得られると考えています。もっと噛み砕いて申せば、地頭が良くなるといってもいいかもしれません。

4. メンタル不調や精神疾患は当然ながらつらい

最後はやはり、実際に心の健康を損なうと本当に辛いということ。個人差はありますが、精神疾患の治療には年単位で時間を要し、通院や入院には少なくない時間がかかり、服薬には副作用がもちろん伴い、仕事や学校など場合によってはいくことができなかったり、何らかの負担や経済的・文化的な損失は被ることになるのは間違いのない事実でしょう。
そのなかで気づいたり、学ぶことなど得るものが人によりあるかもしれません。しかしながら、ならないに越したことはないのです。セルフケアを適切に行うことで、自身が危ない状況にいることに気づく可能性を高めますので、必要な時は休んだり、最悪な環境の中にいるのなら逃げるといった判断を自分自身で下せる可能性を高めます。視野を広く持ち、「今の場所だけが居場所ではないこと」をよくよく理解できると思います。

執筆者

上田捷悟

Shogo Ueda

公認心理師

企業向け教育支援事業等に従事し、各組織の人材育成を支援。その後、合同会社Wiberoを設立。公認心理師。おしるこが好物。

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