うつ病の基本と発症要因、その対策について

⒈うつ病とは

うつ病とは、気分の落ち込みやほとんど全てのことへの興味関心や喜びなどのプラスの感情が生起しにくくなった状態が2週間以上続くことを指します。
DSM-5(精神障害の診断および統計マニュアル)で定義されたうつ病は、少なくとも2週間以上にわたり、抑うつ気分や興味の喪失などが持続している状態です。
厚生労働省の調査によれば、うつ病の生涯有病率は6.7%であり、100人のうち6~7人が罹患する、珍しくない病です。特に女性は男性の約2倍の有病率であると言われています。
また、抑うつと躁状態(気分が高揚する状態)が交互に繰り返されるものを双極性障害と言い、さらにそこから躁状態とうつ状態を繰り返す双極性1型、軽躁状態と抑うつ状態を繰り返す双極性2型に細かく分類されます。これらは気分障害として同疾患カテゴリーにまとめられています。
うつ病の症状は精神症状と身体症状のそれぞれあり、精神症状では意欲や興味関心の低下、強い緊張感、不安感、焦燥感などが症状として発現する傾向になり、「自分には生きる意味がない」「いない方がいい」というような自責・自虐的な思考、発言が見られます。一方、身体症状では、不眠や倦怠感、眩暈や吐き気などさまざまな不調をきたすとされています。そして、うつ病の悪化が進んでいけば、「死にたい」と希死念慮を抱き、自殺を企図して行動に移してしまうケースも少なくありません

⒉うつ病の発症原因

実はうつ病の発症メカニズムは厳密には解明されておらず、本人の性格や遺伝要因、生活環境等が絡み合い発症すると言われています。生物学的、心理的、社会的な要因が相互に影響し合うことで発病にいたります。
特に就職や転職、離婚や大切な人との死別など環境変化がきっかけとなり、そして生物学的な内因が促進因子となりうつ病を発症することが一般的です。ここでいう環境変化とは、離婚や死別、リストラなどの出来事はもちろん、社会的には喜ばしいとされる結婚や昇進昇格などといった出来事、「年をとる」などの時間経過的な変化、「誰かに言われたちょっとした一言がきっかけで考え方が変わった」というような自己認識の変化も変化として含みます。当人以外からすれば、「そんなことで」と思うような出来事でも、結果としてうつ病発症の原因となっててしまうことが少なくなく、周囲もなぜ彼・彼女が変わってしまったのか分からず、困惑してしまうこともあるでしょう。
加えて本人もうつ病の恐れがあることを自覚していないこともあり、適切な支援に巡り会えず、本人はもちろんその周囲も悪い方向へと向かっていく恐れがあります。
とはいえ、ここまでの説明ではイメージがつきにくいと思いますので、その人のストレス耐性の「一線を超えてしまった」「糸が切れてしまった」状態になった時、うつ病の状態になると捉えていただいても、概ね事実に即しているでしょう。

⒊うつ病が危険視される理由

うつ病を発症していると社会生活を送る上で適当な判断を下せなくなってしまうことも多々あります。例えば、昼寝をする、ぶらっと散歩に出かける、コンビニでプリンを買うといった、日常生活で何気なく行う選択と同列に「死」の選択肢を並べ、本人的には”ぶらっと”死や命に関わる危険な行為に及んでしまう。あるいはほぼ無自覚の状態で、死につながってしまう行動をとってしまう。こうした認知の歪みや機能的な判断を下せなくなってしまうことが起因し、うつ病患者の自殺率を極めて高いものにいたらしめています。
また、うつ病は再発率も高く、一度罹患してしまうと約60%の確率で再発すると考えられています。さらに、2度目、3度目、4度目となることに再発率も比例的に上昇していくことが指摘されていて、うつ病から抜け出せずにいる人も少なくない現状です。
このような事実がうつ病が危険視される理由であり、学校や職場等でもメンタルヘルス対策が近年急速に進められるようになった背景の1つともなっています。

⒋うつ病を治療するために

うつ病の治療は薬物療法とカウンセリングが用いられます。
薬物療法では、主にセロトニンの働きを強める選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)が用いられます。そのほかにもセロトニンとノルアドレナリンの働きを強めるセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬等が用いられます。
薬物療法は長期戦で、効果が現るまで1ヶ月以上、半年以上の服用を継続していくことが一般的です。薬物療法は時間がかかるということを意識し、気長に継続していくという認識を持っておくことも大事かもしれません。
また、個人により合う薬、合わない薬もあると思いますが、主治医に相談しながら薬物療法を継続していくことが大切です。
一方、薬物療法と併用する形でカウンセリングが取り入れられることも一般的です。
事実、薬による治療がうまく機能しない場合もあり、認知行動療法を主としたカウンセリングもうつ病治療において重要な位置を占めます。うつ病患者は往々にして、思考や認知が抑うつ的なスパイラルに陥っています。
例えば、正常な心身の状態の人であれば多少のネガティブな体験をしたとしても、一時的に抑うつ的な気分になりますが、少しの時間が経過すれば気持ちの沈みはなくなるでしょう。しかし、うつ病患者の場合は独特の思考パターンがあり、抑うつにつながりやすい認知的処理を活性化させてしまいます。現状や今の感情を過去に体験したネガティブな出来事と結びつけたり、そもそも嫌な体験を思い出しやすくなってしまい、抑うつ気分が持続されるようになります。加えて、「自分が弱いからだ」「わがままだからだ」のように抑うつ気分の原因を自分自身に帰属させてしまうことで、永遠と抑うつ状態が持続されます。
このように抑うつの負のスパイラルに陥ってしまった状態では、一向に抑うつ状態から回復はなされません。時間がかかる作業になりますが、主に認知行動療法を用いて少しずつ機能的な認知につながるように治療をしていきます。

⒌うつ病の予防方法

うつ病を予防するための方法はいくつかありますが、最も大事なことは自分自身をよく把握しておくことです。
うつ病は多くの場合、”ある一線”を超えてしまうことで発症します。その”一線”は個々人で異なるものではありますが、「自分がどのような状況に置かれると危ないか」という感覚を持っておくことがうつ病を予防する上で欠かせません。
人それぞれでストレス耐性は異なりますので、自分自身でどのようなことが嫌で我慢ならないか、そしてその嫌なことをどのくらいなら耐えることができるのかを把握しておくことで、いざ危険な状況が現れたときに「いま、危ないかもしれない」というアラートを自分自身で発して、危険を回避する可能性を高めてくれます。
そして、うつ病や人間の認知の仕組み、セルフケアに関連した知識をインプットしておくことも大切です。知識は人の視野を広げてくれます。視野が広がると、自分自身の状況も客観視できるようになり、心身の危機が近づいた時に、先のように警告を与え、危険回避の可能性を高めてくれます。

⒍うつ病で苦しむ人への接し方

うつ病の発症率は高く、あなた自身はもちろん、身近な家族や友人、恋人などの人間関係の中でうつ病患者と出会うことは可能性として決して小さなものでありません。
では、うつ病患者とはどのように接したら良いのか。「うつになるなんて根性がないな」などと人格否定的なことを言ってしまうのは言語両断ですが、よく、「頑張れ」とか「きっと良くなるよ」というような励ましをしてはいけないと聞くのではないでしょうか。
これは事実です。そもそもうつ病とは「頑張ろうとも頑張るエネルギーが枯渇してしまった状態」であり、そうした人に向かって「頑張れ」と励ますことは、かえって当人の自己肯定感を低下させたり、自責感を高めてしまう結果となります。
加えて、周囲が気を使い旅行など、一般的に見れば気分転換となるようなことに誘ってしまうのもNGです。うつ病の症状の1つとして、興味関心の低下があり、本人としては旅行や遊びに興味はなく行きたくもないのだが、「せっかく誘ってもらったから」とその善意に応えようとしてしまい、さらに疲弊してしまう。改善につながらず、悪化してしまう可能性もあるため、こうした行為はNGとされています。
では、どうすれば良いか。いろいろと配慮をすることはあると思いますが、本人を受容し、ゆっくり休むように促しながら、日々自然と接することを心がけいくしかありません。
周囲としては、気を揉んでしまうところではあるかもしれませんが、本人が話したいときは話し相手になり、焦らずに気長に構える心持ちが大切です。

以上、うつ病の基本と治療法、予防策等についてまとめてきました。繰り返しになりますが、うつ病は誰もが発症する危険性のある身近な病です。一度うつ病を発症すると、年単位でうつ病と付き合っていくことになり、最悪の場合は命の危険に晒されることになります。
ぜひ、万全に健康な状態であったとしても、日頃の自身へのケアを怠らず、うつ病が身近な病気であるという認識を頭の片隅にでも留めていただけるといいかと思います。

【参考文献】
 ・厚生労働省 地域におけるうつ病対策検討会「うつ対応マニュアル-保健医療従事者のために-」(平成16年1月)「コラム・活動事例・資料編」の「資料1:うつ病について」
・春日武彦. 『はじめての精神科 第3版』.医学書院. 2023.
・丹野義彦et al. 『臨床心理学』. 有斐閣. 2015.

執筆者

Wibero編集部

ウィベロ

オンラインカウンセリング・コーチングを展開しているWiberoです。

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