1. はじめに
こんにちは。Wibero(ウィベロ)代表の上田です。
今でこそ緩和されてきましたが、COVID-19でここ2年ほどの間は心理カウンセリングを行う臨床現場もかなりバタバタとして、今まではあまりしていなかったオンラインカウンセリングを導入したといった現場も少なくないことだと思います。クライアント、カウンセラーにとっても大きくカウンセリングのあり方が変わったここ2年であったのかもしれません。 今回、書きまとめましたものは、「オンラインカウンセリングが増えてきたけど、本当に効果があるの?」といった疑問について、先行研究をもとに明らかにしていこうという内容です。加えて、ここ数年で複数の事業体がサービスを提供し始めている「チャットカウンセリング」について言及していきます。そして、僕の考えについても最後にまとめていこうと思います。なお、今回はあまりなぜ効果があったのか、Whyの部分には深掘りしないでおこうと思います。理由は、実生活とも共通するようなことが要因であったり、そもそも話しが長くなってしまいそうなので。 また、最後に参考文献も載せておきますので、ご関心あられる方は、ぜひそれらの資料にも当たっていただければと思います。
2 . オンラインカウンセリング VS 対面のカウンセリング
学術的にはオンライン会議システムを利用した心理療法のことを(videoconferencing psychotherapy : VCP)と表現しているが、ここでは一般的名称であるオンラインカウンセリングとして話を進めます。 オンラインカウンセリングについて、 通信環境さえ揃えば、好きな場所でかつ好きなタイミングで利用でき、クライエントはもちろん、カウンセラーにとってもまた、カウンセリングを利用する方の中には、外出の障壁があり、 オンラインカウンセリングであれば、自宅で利用することができるため、カウンセリングへの障壁を下げる効果もある程度期待することができます。 そんなオンラインカウンセリングの効果はどうでしょうか。Backhausら(2012)の研究によれば、65件の先行研究をレビューしたところ、オンラインカウンセリングはあらゆる治療形態や多様な集団で使用され、一般的にはクライエントの満足度は高く、従来の対面式心理療法と同様の臨床結果をもたらしていることが明らかにされています。 また、Fernandezら(2021)は、オンラインカウンセリングと従来の対面型カウンセリングの効果を比較した研究を集め、効果や治療対象、療法に関するメタ分析を行なった結果、オンラインカウンセリングは対面型カウンセリングと同様に効果的であることが示され、特に不安症状やうつ、PTSDといった治療対象に対して、顕著に効果的であったことが示されています。
ここまで取り上げた研究と同様に、多くの研究においてオンラインカウンセリングの効果は対面型と同等であると認められています。厳密に申し上げれば、クライエントの状態や用いる心理療法によってオンラインカウンセリングと対面カウンセリングの向き、不向きはあります。また、利用者にとっていずれの方法のどちらが魅力的であるかを主観的に問うた研究では、オンラインカウンセリングの方が魅力的であるという結果が示されるなど(Wang et al, 2020)、アクセス性や”カウンセリングを受けている人”という社会的なスティグマも作用し、オンラインが好まれる傾向があるのかもしれません。 しかしながら、従来の face to faceの対面型カウンセリングと同等の効果が期待できるとわかった以上、大きな1つの選択肢として利用者に提示できるようになったことは大きなことであると考えます。
3. オンラインカウンセリング VS チャットカウンセリング
先ほどまでオンラインカウンセリングと対面のカウンセリングの比較についてみてきました。ここからはオンラインカウンセリングと最近各企業からも提案され始め、利用者数も増加しているチャットカウンセリングを見ていきます。国内でもUnlace社(https://www.unlace.net/)やcotree社(https://cotree.jp/)など複数事業体がサービスを適用しており、ご存じの方もいらっしゃると思います。
結論から言えば、チャットカウンセリングとオンラインカウンセリングを単純比較したような研究はあまりなく(あったとしても精度が低く、質の悪い研究(Dowling, 2013)が少なくない)、治療の一部として活用され、その複合的な方法全体の効果検証を行う研究がなされることが多いのが現状です。実際場面に即した臨床的研究です。 とは言え、限られた領域の中ではチャットカウンセリングの効果が示され、不眠症に対する治療ではチャットカウンセリングがオンラインや対面のカウンセリングと同等、あるいはそれ以上の効果があったと明らかにする研究があるなど(Gieselmann et al., 2021)、クライアントの状態などを鑑み、適切な方法を用いることで効果的な結果を得られるのかもしれません。 しかし、チャットカウンセリングはチャットであるがために、即時的な反応(フィードバック)を得ることができないケースが多く、スムーズなコミュニケーションがなされないことが少なくない。また、テキストのみに頼るため、細かなニュアンスや表情などの情報が削ぎ落とされてしまうこと、離脱率の高さなどの課題があることは事実であり、チャットカウンセリング単体で支援するのではなく、他の方法と組み合わせることが効果をより高めると考えられます。
4. 僕の肌感覚として
ここまで、オンラインカウンセリングと対面型のカウンセリング、チャットカウンセリングについて比較をしてきました。利用されたことがある方や臨床家の方々にとっては、実際のイメージと異なっていると思われるかもしれません。こんなことを言うのもアレですが、心理学や神経科学系の研究はそんなものです(実際間違っていることも少なくないので、その辺りはまた別の機会にまとめますが)。 カウンセリングを利用したことのない方々においても、この結果はイメージできると思います。例えば仕事でも、Slackやzoom内のチャットだけでは伝えにくい、言いにくいことがあり「この後少しオンラインで話しません?」みたいな状況を経験したことがあるのではないでしょうか。入り口や比較的簡単な連絡や相談の手段としてテキストチャットは効率的で生産性を高めるものでありますが、複雑な事象や伝えにくい、言いにくい事柄については口頭でコミュニケーションをとった方が効果的である場面が多くあります。また、オンライン会議ツールと直接対面でのコミュニケーションを比較しても、すでに関係性のある間柄であれば効果的なコミュニケーションが取れることが多いですが、あまり関係性が出来上がっていない状況では、オンラインであると話が途切れてしまったり、お見合いがあったりなど効果的にコミュニケーションがなされないといったことを経験されていると思います(僕も初対面の方々とオンラインでお話しする場合は、ちょっと気を張ってしまいがちです)。というように、使い分けや複合的に使用するという、当たり前な結論に帰着するわけです。
ということで、臨床家から考えればチャットカウンセリングは支援を開始するにあたってのよい導入方法であり、オンラインあるいは対面でのカウンセリングへと繋げていく1つの効果的な手段であり、必要とする方々へより多くケアを提供するきっかけとして作用していると考えます。臨床家の腕に左右されますが、いずれも効果的。そういうことです。 利用者から考えれば、単純に選択肢が1つ増えたと同時に、利用障壁が下がり、気軽に相談することができるメリットを享受することができていると思います。
僕的に比較をすれば、(せっかちな性格もあるからか)リアルタイムでのコミュニケーションを好みますので、同じ時間を共有したカウンセリングが個人的にストレスなく好きだなーと感じてしまいます。これはカウンセリングに限らず、仕事上で何か連絡や相談する際もそうですが、パッと話してその応答が来る環境が快適に感じてしまう個人的性質なのかもしれません。とは言え、今、個人的性質と申しましたが、ヒト(とういか動物)は即時強化(フィードバック)が望ましい行動の習得に効果的であると、かのスキナーさんが明らかにしていますので、即時に反応やフィードバックが得られる方が行動科学的には自然なのでしょう。事実、学習アプリ等、デジタルアプリなどをつくる際も、この即時強化を取り入れているということをよく耳にしますし、即時性は舐めてはいけないものであるとは思います。 ですが、誤解なきようもう一度言いますが、何より支援は組み合わせて行うことが効果的であることは間違いありません。
5. まとめ
最後まとめとなりますが、いずれのカウンセリング方法も効果的であることは多くの研究で認められており、実際の現場でも効果が現れていることが多いと考えられます。それぞれにおいての強みがありますので、どう使い分けるかが大事なポイントとなりそうですね。 しかしながら、これからはどんどん新しい心理療法がデジタル技術やAIの発展により出てくることは確実で、今の在り方は大きく変わっていくことでしょう。VR(ヴァーチャルリアリティ)を用いたエクスポージャー法が通常のエクスポージャー法より効果的であったことが明らかにされたように(Carl et al., 2019)、新しい技術を使えば言語やイメージだけでなく、視覚・聴覚的なリアルを持って新しい体験をカウンセリングの中で提供することができます。また、認知行動療法(Cognitive behevioral therapy :CBT)の考え方を用いたチャットボットシステムやデジタル薬など開発が進んでいます。生成系AIに発展により、今後カウンセリングに特化したモデルも開発され、広く利用される世界線が来ると思いますし、カウンセリングのあり方や役割自体も変容していくことでしょう。カウンセラーも変化を求められ、それに適応して時代にのっていかないといけないですね。大変ですが。いずれ、この辺りのテーマも考えてまとめていこうと思います。
それでは今回はここまでとします。最後までお読みいただきありがとうございました。次回もよろしくお願いいたします。
【参考文献】
Backhaus, A., Agha, Z., Maglione, M. L., Repp, A., Ross, B., Zuest, D., . . . orp, S. R. (2012). Videoconferencing psychotherapy: A systematic review. Psychological Services, 9, 111–131.
Carl, E., Stein, A. T., Levihn-Coon, A., Pogue, J. R., Rothbaum, B., Emmelkamp, P., Asmundson, G. J. G., Carlbring, P., & Powers, M. B. (2019). Virtual reality exposure therapy for anxiety and related disorders: A meta-analysis of randomized controlled trials. Journal of Anxiety Disorders, 61, 27–36. https://doi.org/10.1016/J.JANXDIS.2018.08.003
Dowling, M., & Rickwood, D. (2013). Online Counseling and Therapy for Mental Health Problems: A Systematic Review of Individual Synchronous Interventions Using Chat. Http://Dx.Doi.Org/10.1080/15228835.2012.728508, 31(1), 1–21. https://doi.org/10.1080/15228835.2012.728508
Fernandez, E., Woldgabreal, Y., Day, A., Pham, T., Gleich, B., & Aboujaoude, E. (2021). Live psychotherapy by video versus in-person: A meta-analysis of efficacy and its relationship to types and targets of treatment. Clinical Psychology & Psychotherapy, 28(6), 1535–1549. https://doi.org/10.1002/CPP.2594
Gieselmann, A., Podleschka, C., Rozental, A., & Pietrowsky, R. (2021). Communication Formats and Their Impact on Patient Perception and Working Mechanisms: A Mixed-Methods Study of Chat-Based vs. Face-to-Face Psychotherapy for Insomnia. Behavior Therapy, 52(2), 430–441. https://doi.org/10.1016/J.BETH.2020.06.001
Watts, S., Marchand, A., Bouchard, S., Gosselin, P., Langlois, F., Belleville, G., & Dugas, M. J. (2020). Telepsychotherapy for generalized anxiety disorder: Impact on the working alliance. Journal of Psychotherapy Integration, 30, 208–225.
執筆者
上田捷悟
Shogo Ueda
公認心理師
企業向け教育支援事業等に従事し、各組織の人材育成を支援。その後、合同会社Wiberoを設立。公認心理師。おしるこが好物。
研修・セミナー・ワークショップ
【管理職向け】組織力をアップするためのメンタルヘルス研修
アサーショントレーニング(アサーティブコミュニケーション研修)
認知行動療法活用研修
学生向けメンタルヘルスセルフケア研修
セルフマネジメント研修
心理学を応用した習慣化トレーニング(研修)
レジリエンス研修
先延ばし行動防止研修
カウンセリング基礎研修
若手・新社会人向けメンタルヘルス・レジリエンス研修
メンタルヘルスセルフケア研修